セカンドオピニオンの勧め
2022/03/18
Case2
「20年以上前にお墓を買ったのですが、年々土が減って墓石が傾いてしまうのです。何度土を入れてもダメで、お寺に相談しても埒があかず、仕方がないのでお墓を移そうと思ったのですが、原状回復費用も移転費用もバカになりません。最近になってようやく、墓石が傾くのはお寺が松の大木を抜いたことが原因だとわかりましたので、弁護士さんにお願いして、お寺に対し、原状回復費用の免除と移転費用の支払を請求する裁判をしています。ところが、先日、弁護士さんから『次回20万円で和解してください。和解しなければ判決で負けるかもしれません』と言われてしまいました。とても驚きましたし、何より納得がいきません。20万円では原状回復費用の足しにもなりません。このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか」
私たちは、これまでの裁判でどのような主張をしてきたのか、書面を拝見しました。書面は、法的な主張としては破綻しており、これでは敗訴は免れず、和解しなければ20万円どころか1円ももらえないことがわかりました。何とかこの状況を打開しなければなりません。私たちは、裁判になる前にお寺との間でどのようなやりとりがあったのかなどを詳しく伺い、この事件を受任することにしました。
早速、私たちは、裁判所に対し、代理人弁護士交代による次回期日の延期を申し出ました。裁判所の回答は「もう1年以上審理していますので、いたずらに期日を重ねることはしません。延期は認めますが次回期日までに全ての主張と立証を完了してください。それで審理を終結し、和解しないのであれば判決します」という冷たいものでした。チャンスは1回きり。次の期日までに効果的な主張立証を行わなければ負けてしまいます。
私たちは、法的主張を勝ち目のあるものに変えることに加え、これはただの墓の利用権の問題ではなく墓に眠っているご相談者のご両親の供養の問題であることを裁判官にしっかりと伝えることで、裁判官の心を揺り動かそうと考えました。
ご相談者の家は大変に貧しく、両親は朝から晩まで働きづめで、夜中にご相談者が目を覚ますと真っ暗闇の中で畑作業をしており、それを見たご相談者自身も、小学生の頃から小枝を山のように拾ってきて身体よりも大きな束を作り、それを背負って売りに行き家計を助けていたとのことでした。自分を一生懸命に育ててくれた両親に対する感謝の気持ちをご相談者は、立派な墓を立てることで表したのです。
ご相談者の墓に対する思いは、法的主張の是非にのみ目を奪われていた裁判官の心に、強い感銘を与えました。裁判官は、ご相談者に心から優しい言葉をかけてくださり、一転、相手方に対し、ご相談者の心情に配慮した和解金の支払いを力強く説得してくれるようになったのです。
結局、お寺がお墓の改葬に伴う原状回復費用を負担し、加えてご相談者に解決金として150万円を払うという内容の和解が成立しました。
裁判官は多数の事件を抱えており、つい事務的な対応になることは止むを得ない面もあると思います。裁判官の心に強く働きかけなければ、数ある事件の中の1件として埋もれてしまい、ご相談者の思いは実現しないのです。
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